初代サウンド・ディレクターとして、また「おはよう!!朝ごはん」「THE IDOLM@STER」などの作でも知られるクリエイター、佐々木宏人。
YMOを音楽的ルーツに持ち、ナムコ(現バンダイナムコゲームズ)のサウンド・チームのなかでも細江慎治や佐野信義らとともに"ナムコイカレ系"と呼ばれた彼が、
いかにアイマスと関わり、アイマス・サウンドの基礎を作り上げたのだろうか。
「基本的に自分のスタンスとしてやりたいことをやるっていうのがあって、ゲームも新規で立ち上げるプロジェクトとかに惹かれていて、いつも"新しい仕事をやりたいやりたい"って上司に言っていて。
そういう新しい仕事アイマスの話が来たので、あまり内容を考えずにやりたいって言っていました(笑)」
こうしてみずからが志願してアイマスのサウンド・ディレクターに就任した彼が手がけたのが、高槻やよいの持ち曲「おはよう!!朝ごはん」。
まだ設定が固まりきってない段階でやよいに食べ物を結びつけた理由は……佐々木が持つ独自のアイドル論にあった。
「アイドルの曲ってだいたいタイアップ前提じゃないですか。
僕ってアイマスの曲を作るときはタイアップを考えて作っているんですよ。
で、"おはよう!!朝ごはん"を作るときも農協のタイアップが来るといいなって(笑)。ちょっと"おさかな天国"が流行ったじゃないですか。
食べ物の歌ってタイアップがとりやすいしヒットしやすいのかなって、短絡的に(笑)」
また一方で、ディレクターとしての視点から初期アイマス・サウンドをどう捉えていたのだろうか?
「ゲームをプレイするという音ゲー的な要素もあるので、曲の構成や尺といったフォーマットが決まっていたほうがプレイしやすいのかなっては仕様的にあらかじめ決まっていました。
でもそれ以外の部分でゲーム用に何かしたっていうのはなくて、最初に提案したのが、"ゲームだからゲーム・ミュージック的なものを作る必要はないよ"って。
また声優ソングやアニソンを意識する必要はないし、普通にアイドル・ソングを作ろうっていう話はしましたね」
そして、出来上がった楽曲のいずれもが魅力的なものに仕上がったのは御存知のとおり。
そこにはオーソドックスなフォーマットのなかでアイドル・ソングを作るというなかでも、佐々木が考える
「ありがちなものを作るよりかは、嫌われてもいいからインパクトのあるものを作ったほうがいいと思っていた」という意識が反映されていたからということでもあるだろう。
こうしたアイマスのサウンドにおける礎を築いた佐々木に、アニメ化などさらに飛躍するアイドルたちに対する心境を語ってもらった。それは、初期から携わる彼ならではの視点によるものだった。
「変わってきているのかなって。キャストさんの人も知名度も上がってきたし、最初はバンドとして出てきたんだけど、ひとりひとりが活躍していって変わっていって、いつのまにかみんな大御所になった感じです。初期から作っている視点だと思うんですけど、娘が巣立ったかのような(笑)。感覚として家族のような目で見ているんですよね」
佐々木宏人
作曲家。
1993年にナムコ(現バンダイナムコゲームズ)に入社したのち、「アイドルマスター」の初代サウンド・ディレクターに就く。
また「THE IDOLM@STER」「私はアイドル♥」「Colorful Days」など数々の楽曲を手がけている。