数あるアイドルマスター(以下:アイマス)の楽曲において最多の歌詞を提供している作詞家、yura。
アイマスとともに作詞家としてのキャリアをスタートさせ、現在までそのトリッキーなライミングや多彩なギミック、そしてアイマス・サウンドのアイマスたる側面を担っている人物だが、その原点は意外なところだった。
「小さいころからポエムなどを書いていて。たまに童謡とかの伴奏とかで自分で歌詞を綴ってみたりとかはあったんですけど、普通の楽曲に作詞をするというのはそれまでまったくなくて。Jesahmさんからいただいたのが初めてです」
こうして、当時アーケード版アイマス用に音楽制作をスタートさせていたサウンド・クリエイターのJesahmに、作詞家としてプロジェクトに招かれたyura。
そこで初めて出会ったアイドルが三浦あずさと水瀬伊織だった。
そして最初はあずさのためにペンを取ったのだが……。
「初めは"まずは好きなように書いてみて"って言われて、書いたら見事にボツを頂きました(笑)。
Jesahmさんから言われたのは、"現実味を帯びた等身大のあずさを、あずさはこう考えているのかっていうのを書いてくれ"って言われて。
じゃあタイトルも現実的な時間に設定してみようかなと」
こうして生まれたのがあずさによる等身大のラブソング「9:02pm」。
"午後"と"パーソナル・メッセージ"というダブル・ミーニング・数字によるアナグラムなど、さまざまな意味を内包したタイトルや歌詞世界は、以降のyura作品においても強く踏襲されていく。
では、そんなギミックとポップネスに彩られたyuraワールドは、どのようにして生まれるのだろう?
「基本的に私が作詞をする場所って、とても限られた場所なんですよ。
お風呂に入っているとき、湯船に浸かっているときがいちばん多くて。
歌詞を書かなきゃって思うのではなくって、ふと浮かぶというか、綺麗に言うと"降りてくる"(笑)。
常に心の中でアイドルと会話しているという感じで、"この曲どう思った?"って訊くと"こんなこと思ったよ"とかいろいろ話しかけてくれるので、それをただ単純にワードに打ち込むんです。
だから自分が作詞をしているというよりかは、彼女たちと会話してそれを私が通訳・書記をしているというか」
「現在ではアイドルたちがフランクに話しかけてくれる」と語るyuraは、アイドルたちと対話をすることで彼女たちの内面を映した歌詞を生み出していく。
「9:02pm」にてあずさの等身大に迫ったように、アイドルたちがリアルに感じていること、そして彼女たちが望む(トライしたいと思う)方向へと導いているようでもある。
ゆえにサウンドが圧倒的広がりを見せるアイマス音楽のなかで、歌うアイドルたちが成長しているさまと同期したリリックがしたためられていくのだろう。
こうしてアニメ化を控えるなど、さらなる飛躍を遂げる彼女たちに対して、yura自身も「楽しみ」であると語る。
「みんなどんどん歌が上手くなって、ライブでもプロデューサーの方々を盛り上げて。
これからも作詞をしていくときにどんな会話ができるのかなって楽しみです。私はこの先をあまり知らないがゆえに、知らないからこそ私のなかで無限に未来が広がっているので、
どういう成長をしてくれているのかなっていちプロデューサーとして見守りたいです(照)。
I love your love」
yura
アダマンツミュージック所属の作詞家。
『VitaminZ』『太鼓の達人』『ストライクウィッチーズ』『RIO』など、ゲームやアニメの挿入歌の作詞を幅広く担当する。
『アイマス』ではアーケード版から携わり、「inferno」「KisS」など一部楽曲は別名義「yura Dark」として活動。