THE IDOLM@STER

ゲーム『アイドルマスター(以下アイマス)』にて「ポジティブ!」「relations」「Do-Dai」など数々の人気曲を手がけるクリエイターとして、 また現在は本作のサウンド・ディレクターとして作品の音楽を統括する立場である中川浩二。
『リッジレーサー』や『エースコンバット』などといった人気シリーズのサウンドを手がける彼のもとに、ある日“アイドルゲーム”というアーケード・ゲーム用の企画が降りてくる。

「“こういう企画があるんだけど、やりたい人いる?”って話が来て。
そこで手を挙げて、1曲作ろうかなと。最初はキャラクターの絵があって、年齢とイメージ・カラーが決まっていて。
誰が誰を担当するかみんなで割り振ったんですけど、僕はいちばん小さくて元気そうだからっていう理由で(双海)亜美・真美に」

もともとゲーム音楽と同じく松田聖子やおニャン子クラブ、モーニング娘。などアイドル・ソングを愛聴していた中川だったが、実際にアイドル・ソングを作るのは初めて。
曰く「ノウハウゼロ」の状態から『アイマス』の楽曲制作はスタートした。

「特に“こういうのを作れ”っていうのはなかったです。
よく言われるんですけど、初期の楽曲って本当にバラバラで、周りでも“もうちょっとそれぞれ歩み寄ったほうがいいんじゃない?”っていう話があって。
それで最終的に佐々木(宏人。初代サウンド・ディレクター)が“THE IDOLM@STER”という中心になる楽曲を作ったんですけど、それぐらいあまり真ん中がないって当時から話していましたね」

“アイドル・ソングを”という目的があるなか、それぞれが自由に作ることでプレイヤーにまったく新しい“引っかかり”が生まれた、と中川は分析している。
しかし自由とはいえ、キャラクターが膨大な数の楽曲を歌うというシステムを含め、初めてな試みの数々に、当初は試行錯誤の連続だったという。

「(レコーディングのときは)特に歌唱ディレクターを立てるでもなく、作曲者自身がディレクションをしていましたが、ホントに探り探りでしたね。
声優さんにしてみても一緒に創っている感があって、僕らも必死にやっていましたけど、きっと、彼女たちもそれまでに仕事でそれほどたくさんの歌を歌っていたわけではないでしょうから。
向こうは向こうで一生懸命練習してきていたし、こっちはこっちで一生懸命ディレクションするしで、それを繰り返して互いに成長していったのかな、と感じています」

こうしてスタートを切った『アイマス』が、現在ではゲームの枠を飛び出してさまざまなメディアを通して大活躍しているのは周知の通り。
そこで中川に“『アイマス』というコンテンツが愛されていると感じるときは?”という質問をしてみた。
すると彼は、昨年7月におこなわれたイベント『THE IDOLM@STER 5th ANNIVERSARY The world is all one !!』での出来事を挙げた。

「そこで初めて浅倉(杏美)さんが(萩原)雪歩として登場したんですよ。(イベント告知段階では)雪歩っていう名前はなかったんですけど、僕は彼女が出てくることは知っていたのですごく緊張していたんですね。
でも彼女が出てきたときに雪歩のカラーである白のサイリュームを出している人が近くにいて、それを見た瞬間に感動したんですよね。
“ああ、そうだよね。みんな仲間だよね”って。
キャストでは出るって発表されてなかったけど持ってきているんだって、出してくれるんだって、ファンの愛を直で見せられて感動しましたね」

そうしたファン=Pたちの愛とともにさまざまなメディアを股にかけて展開されていく『アイマス』。そしていよいよ、今夏からは待望のアニメ化が決定した。

「監督さん(錦織敦史)もそうなんですけど、皆さん『アイマス』がすごく好きなのが伝わってくるんですよね。
『アイマス』愛があって。今まで違うフィールドで活躍されていたクリエイターの表現がアイマスに入ってくる。それが本当に楽しみで。
音にしても、アニメはアニメで全然スタイルが違う。楽曲でもこれまでとは違うんですよ。テンポ感が全然違う。
ゲームの『アイマス』って曲を作ってからそれに対してモーションをつけるんですけど、アニメはシナリオありきなので映像音楽的、ある意味ゲーム音楽的なものなんですよね。
また新しい『アイマス』になるなと思います」

中川浩二 バンダイナムコゲームス所属
「アイドルマスター」シリーズで「relations」「ポジティブ!」「オーバーマスター」などの作曲を手がけている。
また「アイドルマスター2」ではサウンドディレクターも務めた。

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